『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2017年8月号
出会い・本・人
加来彰俊先生との出会い(三上章)
本・批評と紹介
- 『聖書における食物規定』
川島貞雄著、教文館―(佐藤研) - 『山上の説教から憲法九条へ』
「宮田光雄著、新教出版社―(朝岡勝) - 『キリシタン音楽入門』
皆川達夫著、日本キリスト教団出版局―(樋口隆一) - 『ヨハネの福音書と夕凪の街 桜の国』
小島聡著、ヨベル―(川向肇) - 『人間の運命』
ラインホールド・ニーバー著、聖学院大学―(安酸敏眞) - 『北森嘉蔵伝』
丸山久美子著、教友社―(東方敬信) - 『シンプリー・ジーザス』
N.T.ライト著、あめんどう―(鎌野直人)
エッセイ
『旧約新約 聖書神学事典』(教文館)を翻訳して(山吉智久)
ハンス=マルティン・バルト教授のこと(荒井 献)
- 本屋さんが選んだお勧めの本
- 書店案内
編集室から
虐待や搾取、カルトや右派政治団体など、昨今国内で「宗教」が巷間の耳目を集めるのはネガティブな文脈上が多い。しかし市井での宗教に対するマイナスイメージを、同じ「宗教者」という意識で慨嘆するキリスト教徒は少数ではないだろうか。
日本人が無宗教と答えたがるのは、新宗教の熱心な布教や偏狭さへの警戒心から、自分は怪しい信者ではないと否定したいためだと宗教学者の島田裕巳は指摘する。日本のクリスチャンが友人にも自らの信仰を隠したりはぐらかしたりするのも、「怪しい」宗教とは無関係とする同様の意図が潜むように思える。
今年二月、ある人気女優が「幸福の科学」に出家し、宗教活動に専念すると宣言したことが話題となった。彼女は両親とも信者で、幼少期から「仏法真理的価値観」を学んできたという。また昨年末には、同教団学生部の女子がグループを結成、非公式アイドルとして活動を始めた。彼女たちは教団運営の中高で学び、礼拝を中心とする規律ある寮生活を過ごしたという。
感覚的に「怪しい」と覚える新宗教での話だが、これをキリスト教に置き換えるとどうか。福音的価値観を学んできた若者が、祈りを欠かさない学生生活を送り、献身して伝道の途を歩む──これは信仰継承の鑑として激賞される事例であろう。
90年代に世間を騒がせた幸福の科学も既に二世が育っているのは時の流れを感じる。50年代に折伏大行進で勢力拡大した「創価学会」は今や三世、四世の時代だ。一方同じく高度成長期に教勢を伸ばした「パーフェクトリバティー教団」は、二世、三世が通うPL学園の生徒数が激減、教会数も半減した。
子女への信仰教育や教勢の維持という課題は、実はキリスト教と同じ「宗教」が抱える問題である。教会が高齢者の占有物となり、キリスト教主義学校がインテリと高所得者層ばかり受け入れ低所得の信者から遠い存在となった現実は、他と変わらぬ「宗教」の事象として見直せるであろう。
兎角蛇蝎のごとく忌避される新宗教だが、教義や勧誘方法などの是非はともかく、生き方や価値観、居心地の良さを伝える努力を覗くのも面白いのかもしれない。(髙橋)