『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。本購入の参考としてください。
2013年5月号
2013年5月号
- 『グループスタディ12章 イエスのたとえ話』芦名弘道著、日本キリスト教団出版局―(黒田若雄)
- 『母を語る』日野原重明他著、日本キリスト教団出版局―(小島誠志)
- 『河井道と一色ゆりの物語』一色義子著、キリスト新聞社―(古屋安雄)
- 『海の奇蹟』山我哲雄著、聖公会出版―(月本昭男)
- 『続・聖公会が大切にしてきたもの』西原廉太著、聖公会出版―(吉田雅人)
- 『聖書のかがく散歩』堀内昭著、聖公会出版―(月本昭男)
- 『キリスト教と社会の危機』W・ラウシェンブッシュ著、新教出版社―(岩城聰)
- 『3・11後を生きるキリスト教』川端純四郎著、新教出版社―(浅見定雄)
- 『キリシタン時代の婚姻問題』安廷苑著、教文館―(小山幸伸)
- 『あかし文章道への招待』池田勇人著、ヨベル―(碓井真史)
- 『追憶と名言によるキリスト教入門』大和昌平著、ヨベル―(吉川直美)
- 『戦時下の女子学生たち』堀江優子編著、教文館―(湊晶子)
- 『ミドルエイジの問題』石井千賀子他著、キリスト新聞社―(遠藤勇司)
編集室から
世の中で「絶対」と呼べるものはひとつもない。あえて言うなら、人は必ず死ぬということぐらいか。先日、某航空会社の役員と話す機会があった。「安全には最大の努力をし、お客様に安心を提供したい」。しかしそれでも「安全に絶対はない」とおっしゃっていた。
一九六六年に静岡県で一家四人を殺害したとし、刑が確定した死刑囚のパウロ袴田巌さんが再審請求をしている。冤罪の可能性が極めて高いとされたまま、三月一〇日に獄中で七十七歳の誕生日を迎えた。
獄に閉じ込められて四十七年目。拘禁症を患い、実姉の面会さえも拒否する状態が続く。
二〇〇七年には、元裁判官が「一審当時袴田さんは無罪だと主張したが、2対1で死刑に決まった」と告白。さらにこのほど実施されていたDNA鑑定では、袴田さんに有利な結果が出た。
袴田さんの獄中書簡『主よ、いつまでですか』(新教出版社、一九九二年)が出版されたとき、岡田武夫カトリック大司教(当時はカトリック浦和教区司教)が本誌に書評を寄せ、《この事件にはわからない点、疑わしい点が多く残されており、彼を有罪にする決め手に欠けている。神ならぬ人間のすること、絶対に誤審がないとは言い切れるだろうか》と指摘している(『本のひろば』一九九二年一二月号)。
近年、足利事件、布川事件、東電OL殺人事件と、再審無罪を勝ち取るケースが相次いでいる。万が一、自分が犯人に仕立て上げられたら……と想像してみる。無関心は最も恐ろしいことであると思う。民主主義の法治国家でも、冤罪事件が起こる可能性はあり、裁判も間違いを犯すことがある。何事にも「絶対」と言えるものはない。 (竹下)