パウロ書簡が平易に解説された手頃な信仰増進の良書
〈評者〉申鉉錫
河合裕志牧師は、牧師としての使命を御教会に於いては、十二分に成し遂げられた牧師である。
今度『パウロの言葉100選』を上梓された。著者は牧会の激務の中から、寸暇を惜しんで聖書を熟読され、その御言葉の真骨頂を的確に解釈されて、読者に伝えている。
評者はまず『パウロの言葉100選』を評する前に、一言述べなければならない。著者は本書を上梓する前に、『イエスの言葉100選』(2013年初版)と『続イエスの言葉100選』(2016年初版)を上梓している。評者は上記二巻を愛読し、大いなる恵みを得ている。ところで主イエスの平易な説教の解釈は元より、難解(第二巻)だと称される御言葉をも、読者が理解出来るようにと、人々の良く使う平易な言葉を使って解釈している。このような心遣いが『パウロの言葉100選』にも使われている。パウロ使徒の書簡には、たまに難解な部分もあるものの、ローマ書、コリント前後書、ガラテヤ書などに見られる難解な箇所も、著者は丁寧に分かり易く解説している。特にローマの信徒への手紙の中で述べられている「信仰義認」の教理も初信者に分かり易く解説している。
さて『パウロの言葉100選』においては、主人公であるパウロ使徒の回心の詳細を知らなければならない。この100選では、パウロ使徒の回心(使徒言行録9章、新共同訳)を踏まえて説明している。回心前のサウロ(後パウロ)は、熱心なユダヤ教徒であり、キリスト教徒の敵であった。著者は、「パウロは熱心なファリサイ派のユダヤ教徒としてこの偽りの新興宗教を許せないと思った」と。なお著者は『パウロの言葉100選』16~17頁において、パウロの回心の記録を詳細に述べている。パウロは回心後、キリスト者の敵ではなく、正真正銘のキリスト者になった。
さて本書は、ローマ書一章より16章、コリント前書の一章より16章、コリント後書の1章より13章、ガラテヤ書6章までの聖句を殆ど欠落なく解説している。まずこの手紙の聖句は大文字で書かれていて、目にすぐ付き易い。一句一句の解説を読んで行くうちに、アッと言う間に手紙全体を読み終えた感動が胸に満たされる。
ところで著者河合裕志牧師は、初信者であられるキリスト者や、未信者の方たちのために、平素良く使われている平易な言葉で解説しておられる。先生は優れた神学者であられる。先生は日本基督教団新横浜教会の主任牧師でいらっしゃる。毎週主日礼拝では、教会暦に従って講解説教を通して信徒の信仰の向上を導いておられる。著者の先生が、『100選』の末尾に次のように記しておられる。
「本書は私が今仕えている新横浜教会での説教を出来るだけ平易に書いたものです。まだ教会に来ていない人々にもパウロという人物に親近感をもってもらえれば幸いです」。『パウロの言葉100選』は持ち歩く上で手頃であり、信仰増進の良書であり、未信者の皆様にとっては、キリスト教を知る上で、又とない手引書であるので、謹んで御紹介する。
折しも今はコロナ・パンデミック時代である。全世界の人々が苦難に喘いでいる。一刻でも早い終息を願って神に祈る。
申鉉錫
しん・ひょんそく=在日基督教会総会名誉牧師、八街グレイス教会担任牧師