366日を共に歩む級友 戦友、通院仲間
〈評者〉水谷 潔
366日元気が出る 聖書のことば
あなたはひとりではない
岩本遠億著
A5判変型・344頁・本体1800円+ 税・ヨベル
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著者が18年間、毎日配信し続けてきたメールマガジンから、366日分をセレクトしたもの。発売一か月も経ない内に在庫僅少となり、重刷になるという。なぜ、多くの読者を惹きつけるのだろう。福音書風に記す。
本著を誰にたとえよう。聖書から真理を教えてくれる教師にたとえようか。いいや、そうではない。本著は、教師から共に学ぶ同級生にたとえられる。読者と共に机を並べ、教師の声に耳を傾ける。その友は、教科書を忘れてしまった読者に、自らの机を寄せ、机を一つにし、共に一冊の教科書を読む。友人は学力優秀なのだが、偉ぶったところは微塵もない。上から目線も、教えてやるモードも皆無だ。対等に親しく付き合ってくれる。自分が学んだことを、愛をもって分かち合ってくれるだけでなく、自分の過去の不正解やそこから正解に至った試行錯誤まで、正直に教えてくれるのだ。この優等生も、自分とさほど変わりはないと分かり、学ぶ意欲が湧いてくる。これなら、授業が苦痛で、学習意欲も学力も、もう一つという読者もやる気スイッチが入る。まさに「元気が出る級友」だ。
本著を誰にたとえよう。選手を訓練し育て、適材適所で活躍させくれる監督・コーチにたとえようか。いや、いや、本著は、監督コーチの下で、共に訓練を受けて、成長するチームメイトにたとえられる。つまり、同じチームに属し、共に勝利を目指す仲間なのだ。友は読者と共に汗を流す。
練習の厳しさも成長の喜びも一緒だ。敗戦のくやしさも勝利の喜びも共有してくれる。読者は自分が個人競技者ではないことを悟る。本著を通じて、同じキリストにあるチームメイトに出会うのだ。世に遣わされる読者にとって、その戦いは厳しく、キリストにある勝利は決して容易ではない。苦戦しがちな読者には、共に戦おうと励まし、戦力不足を実感する者には、徹底して恵みを示し応援してくれる。それを受けて、共に勝利を目指すのだ。この友がいれば、活躍と勝利は夢ではない。何と「頼もしい戦友」だろうか。
本著を誰にたとえよう。病める時、痛みを覚える時、訪ねれば適切な診断と治療を与え、健康生活を応援してくれる医師にたとえようか。いいや、医師ではない。本著は、同じ病と痛みを担いながら、病院の待合室で出会った通院仲間にたとえられよう。友は、自分の病や怪我について正直に語る。現在の罪深さ、弱さ、愚かさ、そして、過去の過ちや挫折を話してくれる。それらは、読者と共通したものばかりだ。友は読者の病も怪我も、それに伴う痛みも知っていてくれる。しかも、当事者として経験的に知ってくれているのが、ありがたい。
自己開示には相互性がある。相手が心開けば、こちらも心の扉が自然に開く。読者は、かたくなであった心を開き、自らの弱さ、愚かさ、失敗と挫折を見せる。それは、神に対しての自己開示となっていく。神はそこに、福音の光による治療を施し、読者の健康を応援する。この友は、傷の舐め合いも鎮痛剤も与えない。治療拒否をしかねない読者に、自分を大切にするよう愛をもって諭し、読者を健やかな歩みへと導いてくれる。何と「ありがたい通院仲間」だろうか。
本著は「366日を共に歩む級友、戦友、通院仲間」である。この友を得て、日々を歩むことをお勧めしたい。
水谷潔
みずたに・きよし= 春日井聖書教会協力牧師、キリスト教性教育研究会会長