▼シリーズ この三冊!
日本でキリスト教の黄金時代を本気で始めるためにこの三冊!

 新しい時代の幕開けに、ようこそ。
 あなたがなにげなく読み始めたこの文章は、あなたのクリスチャン人生を大きく変えるきっかけとなるかもしれません。少なくとも筆者は、そうなることを本気で目ざして書きました。これはただの書評でもコラムでも雑談でも冗談でもなく、日本のキリスト教会の未来を見据えた渾身の提言です。
 人類史を通じて常に世界最大の宗教であり続けてきたキリスト教が、日本ではいっこうに信徒数が増えない不思議な現象については、これまで多くの日本人クリスチャン著述家や研究者が真剣に考察し、その理由らしき仮説がいくつも唱えられてきました。さまざまな議論がありますが、「ノン・クリスチャンがキリスト教への具体的な疑問を述べた際、クリスチャンがうまく答えられないケースが多い」点は大きな理由のひとつとして指摘できます。
 ノン・クリスチャンがキリスト教への疑問を述べるのは、厄介なことでは決してなく、大きなチャンスです。思わず質問するのは、彼らがキリスト教に関心を持っている証拠だからです。しかし、そこで納得できる説明ができなければ、なにかの偶然でせっかく芽生えた貴重な関心の種が「やはり本物の宗教など存在しないのだな」という失望とともに消え去ってしまいます。クリスチャンの回答能力の欠如が、キリスト教を信じる可能性のある人を遠ざけてしまうことになるのです。そうした事態は、できれば回避したいものですが、そのために特殊な才能も訓練も必要ありません。ただ、「答え方」を知っていれば良いだけの話です。
 本稿でご紹介する三冊の本は、筆者の知る限り、ノン・クリスチャンから質問を受けた際に、クリスチャンがキリスト教を弁護する上でリアルに役立つ最強の三冊であり、それは、日本でキリスト教の黄金時代を始めるにあたり、欠かせない三冊でもあります。

『神は死んだのか─9つの証拠から無神論に挑む』


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『神は死んだのか─9つの証拠から無神論に挑む』
・ライス・ブルークス:著
・中嶋典子、朝加奈:訳
・いのちのことば社
・2015年
・四六判392頁
・2,200円

 まず一冊目は、アメリカ人牧師ライス・ブルークスによる『神は死んだのか 9つの証拠から無神論に挑む』(中嶋典子・朝加奈共訳、いのちのことば社フォレストブックス)です。
 著者ブルークスは、無神論者やダーウィンの不完全な進化論を盲信する人たちがキリスト教を攻撃する思いつく限りのパターンを例示し、どうしてそれが見当はずれの批判なのかを論理的にわかりやすく解説しています。
 たとえば、「ヒトはサルから進化したのだから、神が人間を創造したわけではない」という批判については、進化論で科学的に証明されているのは同じ種族間での段階的な小進化であり、サルがヒトになるように種が変わるレベルの大進化は未だ証明されていない事実も詳細に説明されています。
 進化論ひとつをとっても、決して小さな話ではありません。「サルがヒトになったのなら、キリスト教は嘘ですよね」とノン・クリスチャンに言われて、なにも反論できなければ、クリスチャンが増えるはずがないのです。
 ほかにも、無神論者がキリスト教について、ありとあらゆるアゲ足取りをする事例を本書は隠さずに紹介し、そのすべてを気持ち良いくらい明快に論破し続けます。それらは決して詭弁ではなく、すべて事実に基づいた上での主張なので参考になります。
 なお、本書は同じタイトルで映画化されており、映画版では無神論者の教授とクリスチャンの大学生の対決が、魅力的な物語として描かれています。

『キリスト教の精髄』


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『キリスト教の精髄』
・C.S.ルイス:著
・柳生直行:訳
・新教出版社
・年刊
・B6判358頁
・2,860円

 二冊目は、イギリス人作家C・S・ルイスの名作『キリスト教の精髄』(柳生直行訳、新教出版社)です。本書は『ナルニア国物語』の作者として知られるルイスが、ラジオ放送で語ったキリスト教についての伝説の講義を書籍化したものです。ラジオの語りなので非常に親しげでわかりやすいですし、お話の展開が澱みないのは、さすが稀代の語り部だと唸らされます。
 著者ルイスは本書で、キリスト教のあらゆる教派の違いを超えて、なぜキリスト教が正しいとクリスチャンが信じられるのかという理由を、これ以上ないくらいわかりやすい語りくちで解説してくれています。概して、クリスチャンの大多数は、論理的ではなく感覚的にキリスト教を理解し信頼しています。どうして自分たちがキリスト教を信じられるのか、うまく言語化できないケースが多いのです。それこそ、ノン・クリスチャンから鋭い質問をされた時にクリスチャンが困惑してしまう理由です。ところが、ルイスは、その「なんとなく信じられた」という漠然とした感覚を本書で見事に言語化しています。ここで語られているルイスの語りを日本人クリスチャンの多くがマスターして周囲に披露できるようになったら、キリスト教に目ざめる日本人がたちまち激増するでしょう。そう断言できるほどの傑作です。

『パンセ』


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『パンセ』
・パスカル:著
・前田陽一、由木 康:訳
・中央公論新社
・2018年刊
・文庫判744頁
・1,540円

 三冊目は十七世紀のフランスが生んだ大天才ブレーズ・パスカルが書き遺した原稿をまとめた『パンセ』(前田陽一・由木康訳、中公文庫)です。
 パスカルは、数学者、物理学者、哲学者、発明家として名を成した、人類史に特筆される不世出の異能のひとりです。その人類最高レベルの頭脳が、「どうしてキリスト教を唯一の真理として信仰できるのか」という根拠を延々と書いているのが、本書です。
 人類屈指と広く認められた頭脳がキリスト教を弁護してくれるのですから、まさに最強の護教家です。唯一の難点は、パスカルの頭が良すぎるあまり、論理展開がかなり難解である、という点です。しかも、それは膨大なテキストになりますので、よほど根気のある読者でなければ、通読するのは難しいかもしれません。筆者自身、パスカルの主張をすべて理解できているとはとても思えませんが、これほど怜悧に研ぎ澄まされた頭脳がキリスト教こそが唯一の真理だと確信し、全肯定しているという事実を知るだけでも、本書は一読の価値があるでしょう。
 キリスト教を信じるのは非論理的な人間だけだ、という批判には、パスカルの『パンセ』を突きつけるだけで、黙らせることができます。なにしろパスカルより論理的な人間を現代日本で見つけ出すのは困難ですし、本書の切れ味鋭い論理の展開は、おそらく誰ひとり反論は不可能だからです。本書を批判しようにも、「でも、あれは古典ですよね」という論点のズレた苦しい言い逃れしかできないでしょう。
 筆者は、英語圏の神学者が「パスカルの『パンセ』ほど、ノン・クリスチャンをキリスト教に改宗させた本はない」と書いた文章を読んだことがあり、その話に納得できます。しかしながら、欧米人と違ってキリスト教の基礎知識がない日本人のノン・クリスチャンにとっては、聖書の基本的な話だけでも難解に感じられてしまう恐れがあります。また、読者が核心部分に至る前に挫折しそうな重厚さは、本書の悩ましい弱点と言えるかもしれません。

 本稿では、ノン・クリスチャンから疑問をぶつけられた時にキリスト教を弁護するためにリアルに役立つ最強の三冊を見てきました。日本人クリスチャンの多くが、これらの本で紹介されている論理を身につけ、ノン・クリスチャンとの対話で発揮できれば、それによってクリスチャンになる可能性のある日本人は、たくさんいるはずです。これまで日本においてクリスチャンがいっこうに増えなかったのは、日本の特殊な土地柄に合っていなかったわけではなく、単に布教の方法が根本的に絶望的に間違っていただけです。
 ごく近い将来、日本人クリスチャンの意識改革で日本において過去最大のキリスト教の黄金時代が始まる未来を筆者個人的には確信しており、一ミリも疑いません。ただ、それは個人の力では不可能なので、同じような志を持つ人たちが大同団結することが不可欠です。日本のキリスト教会の明るい未来をつくるために、微力ながら今後も全身全霊で取り組む所存です。
 この拙い文章を読んでくださっているクリスチャンの皆さん、日本におけるキリスト教の黄金時代をつくるために、ぜひ教派を超えて共闘させてください。同じ志を持つ人たちが手を取り合って立ち上がる時に、この信仰不毛の地・日本におけるキリスト教の黄金時代は必ず成就します。今ここから、一緒に新しい時代を始めましょう。

書き手
清涼院流水

せいりょういん・りゅうすい=作家、英訳者

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