『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2019年11月号
- 出会い・本・人 真実な言葉を求めて (広田叔弘)
- エッセイ 第17回東北アジア・キリスト者文学会議に参加して 佐藤ゆかり
- 特集 「教皇フランシスコ」について学ぶならこの三冊! 有村浩一
- 本・批評と紹介
- 『EKK新約聖書註解 ヨハネの第二、第三の手紙』
H–J・クラウク著、教文館―(三浦望) - 『贖罪信仰の社会的影響』
青山学院大学総合研究所キリスト教文化研究部編、教文館―(藤本満) - 『ひとりでも最後まで自宅で』
森清著、教文館―(市川一宏) - 『アモス書講義』
ジャン・カルヴァン著、新教出版社―(小友聡) - 『神学の小径Ⅳ』
芳賀 力著、キリスト新聞社―(石井佑二) - 『銀幕の中のキリスト教』
服部弘一郎著、キリスト新聞社―(沼田和也) - 『50年以上前からあった「心のノート」』
福田節子著、ヨベル―(角田芳子) - 『ヒップホップ・レザレクション』
山下壮起著、新教出版社―(福山裕紀子) - 『詩編を読もう 上』
広田叔弘著、日本キリスト教団出版局―(小倉義明) - 近刊情報
- 書店案内
編集室から
若松英輔さんが8月11日付けの日経新聞で書いていた。「死者は生者を守護する。それが先祖という存在の根底にある、と民俗学者の柳田國男が『先祖の話』で書いている。ここでの死者は単に亡くなった人を指すのではない。姿は見えず、その声も聞こえることはないのだが、確かに存在すると感じられる、いわば『生きている他者』だ」。
ちょうど今夏読んだソナーリ・デラニヤガラ『波』(新潮社)を思い出した。教会員の方が教えてくださった一冊。私をよく知る方の推薦だけに、確かに私の求める本で、ページを繰る指は止まらず、いっきに読み終えた。
著者はスリランカ出身。ケンブリッジ大学に学び、ロンドン大学で教鞭をとっている。夫は大学の後輩だった。
2004年冬、著者の人生を二分する出来事が起こる。夫、幼い二人の息子と共にスリランカに里帰りするのだが、クリスマスの翌日、両親も交えて海辺でバカンスを楽しんでいた一家を、大津波が襲ったのだ。助かったのは、著者ひとりだけであった。
死を願い苦しみの淵であえぐ著者に、セラピストはすすめる。失った家族をできるだけ鮮明に思い出し、彼らが生きた証しを書き残すことを。そして本書が生まれた。
まさに《「生きている他者」としての死者》をめぐって書かれた本だと思う。ここに記されたことは、復活の教理とどう結んでいくのだろうか。(土肥)