『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2017年12月号
出会い・本・人
「余は如何にして基督信徒となりし乎」との出会い(中田一郎)
本・批評と紹介
- 『キリストへの愛と忠誠に生きる教会』
上田光正著、教文館―(近藤勝彦) - 『生命の宗教 キリスト教』
竹田純郎著、リトン―(江口再起) - 『キリスト者の証言』
原敬子著、教文館―(東條隆進) - 『キリスト教思想史Ⅱ』
フスト・ゴンサレス著、新教出版社―(片山寛) - 『旧約のアドヴェント』
牧野信成著、一麦出版社―(大石周平) - 『恩寵燦々と』
手束正昭著、キリスト新聞社―(三谷康人) - 『神学のよろこび 新装増補改訂版』
A.E.マクグラス著、キリスト新聞社―(朝岡勝) - 『聖書に登場する12人の非凡な女性たち』
J.マッカーサー著、ヨベル―(矢木良雄) - 『白沢久一』
宮武正明著、大空社出版―(杉村宏) - 『受肉の驚き―アレテイヤ増刊号』
日本キリスト教団出版局―(松木進) - 『あなたに平安がありますように』
佐竹順子著、大空社出版―(乙幡和雄)
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編集室から
他者の信仰、神学に出会う体験が好きだ。疑問に思うことがあったとしても、自身の信仰を見直し、神の豊かさを知る尊い体験だと思う。感謝なことにこの業界では、そんな機会に事欠かない。職場に届く本や雑誌に目を通すだけでも自分の知らない姿のキリストに出会えるのだ。
わたしの出会いの原体験といえば、高校時代に読んだ遠藤周作の『沈黙』だ。昨年映画化され、劇場にも足を運んだ。禁教時代に、日本に潜伏した宣教師を描いた物語であるが、「神様は困ったときに助けてくれます」とお決まりのように教えられてきた高校生にとっては、神の沈黙というテーマは衝撃的であった。棄教を迫られる場面では、「わたしを知らないと言う者は、わたしも天の父の前で、その人を知らないと言う(マタイ10・33)」という、イエスの言葉が離れず、ハラハラしながら読み進めたのを鮮明に覚えている。「踏むがいい」(映画では「踏みなさい」←ここは原作通り訳してほしかった!)の言葉は、衝撃的であったのと同時に、裁き主としてのキリストのイメージが定着していたわたしにとっては、新しいキリストの姿との出会いであった。
最近では、九月に『沈黙』に対するアンサー映画として宣伝されていた米国の映画『アメイジング・ジャーニー 神の小屋より』からもいい出会いをさせていただいた。伝道を全面に出した作品かと思いきや、むしろ教会に向けた作品で、神義論をテーマに、過去に傷を負った主人公に三位一体の神が現れ、癒しを体験していくというストーリー。原作も邦訳されており、著者のウィリアム・ポール・ヤング氏も、「これは神学である」と話しているという。まさしく、他者の神学と出会わせていただいたわけだ。
キリスト教書を開く、それは他者との出会いだ。他者との出会いを通してキリストの豊かさを知らせる、それはわたしたちが担う務めだと覚えて、明日もことばに向き合いたい。(桑島)