『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2016年12月号
出会い・本・人
「多いもんにしたがう必要はない」(比企敦子)
本・批評と紹介
- 『自由への指針』
大嶋重德著、教文館―(川﨑公平) - 『イエスの降誕物語』
及川信著、教文館―(白正煥) - 『教会を通り過ぎていく人への福音』
ウィリモン他著、日本キリスト教団出版局―(芳賀力) - 『そうか!なるほど!!キリスト教』
荒瀬牧彦他監修、日本キリスト教団出版局―(桃井和馬) - 『日本国を建てるもの』
梅津順一著、新教出版社―(山口陽一) - 『原発と宗教』
富坂キリスト教センター編、いのちのことば社―(森野善右衛門) - 『健康への歩みを支える』
石丸昌彦著、キリスト新聞社―(白石弘巳)
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編集室から
昼間は真夏のような暑さでも、日が傾くと涼しい風が吹き、季節が動いていることを感じさせる晩夏の頃、道路脇の狭い傾
斜地、雑草の中に大輪の花を咲かせた百合を見つけた。
その一輪は唐突だがしっかりと、存在感をもって咲いていた。
おそらく、どこかから飛来してきた種がこの場所に着地して、環境に恵まれたのだろう。
旅行先でもらった山百合の種を育てようとしたことがある。
植木鉢に蒔いて、水をやり、日光に当てて、土が乾くとまた水やりを繰り返すこと二週間。まったく変化がないので、調べてみると発芽まで二年かかるとのことだった。子ども頃に比べると随分忍耐強くなったと思っていたが、土しか見えない鉢に二年間も水やりができるほどには達してないことを知っているので即刻挫折。迷わず断念。
最後に種の所在を確認しようと土を掘り起こしてみたが、砂に紛れた小さな種は、もう見つからなかった。
とにかく、簡単に咲かせることができない植物なのだ。
キリスト教において百合は、マリアの純潔や永遠の命の象徴としてもちいられる。聖画の受胎告知では、六枚の花びらが開
いた様子を正面から描いて、ベツレヘムの星に見立てることもあるそうだ。先人たちによって考えぬかれた表現は本当に素晴らしいと思う。
夕暮れ前に出会った百合は、説明書きの横にあった写真の山百合に似ていた。発芽から開花まではさらに数年かかるらしい。
今まで、ずっとそこにいたのだろうか。
一瞬、摘み取って持ち帰りたい衝動を覚えるが、やはり、我慢しなければいけないと思った。雑草が生い茂る場所に舞い落
ちて、世話を受けることもなければ肥料も与えられない厳しい条件の中、天からの恵みだけで花をつけた。凛と逞しい、それ
でいて優美な姿は、まもなく訪れる冬へ向かって、みんなの希望となるために咲いているように見えたから。 (吉崎)