『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2016年4月号
出会い・本・人
「追思考」の歩み(朝岡勝)
本・批評と紹介
- 『〈尊びの愛〉としてのアガペー』
遠藤徹著、教文館―(山本芳久) - 『信じない人のためのイエス入門』
J.S.スポング著、新教出版社―(関田寛雄) - 『元始に言霊あり』
ヘボン他著、キリスト新聞社―(蓮見和男) - 『小川修パウロ書簡講義録9前期論文集』
リトン―(鈴木浩) - 『霊性神学入門』
小高 毅著、教文館―(阿部仲麻呂) - 『海老名彈正』
關岡一成著、教文館―(山口陽一) - 『ルターの十字架の神学』
A.E.マクグラス著、教文館―(加藤喜之) - 『神が美しくなられるために』
R.ボーレン著、教文館―(小泉健) - 『聖書の世界を発掘する』
上智大学キリスト教文化研究所編、リトン―(杉本智俊)
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編集室から
「バックコーラスの歌姫たち」というドキュメンタリー映画を見た。ステージ上、歌手から少し離れたところに位置するバックシンガーにスポットを当てた作品である。原題は、20Feet From Stardom(スターから約6メートル)。本作は2014年アカデミー・ドキュメンタリー賞を受賞した。ソウルミュージックのシンガーの多くが教会の聖歌隊出身であることがわかって嬉しかった。映画の中にも教会のシーンがたびたび出てくる。どの礼拝もパワフルで明るく楽しい。ソウルミュージックの源流の一つが、ゴスペル聖歌隊にあることを改めて実感できた。
映画の主題は、バックシンガーがソロ歌手として成功することの難しさにある。ソロに転向した多くのバックシンガーは挫折する。ミック・ジャガーやデヴィド・ボウイと一緒に歌っていた人が、今は小さなクラブで歌っている。歌が下手なのではない。実力は折り紙つき。しかしスターまでの、たった20フィート(約6メートル)が超えられない。ソロになるには才能やタイミングのほかに、強い意志がいるのだそうだ。スティービー・ワンダーは言う。「ソロになるためには、ラクで楽しいところから一歩出ないとね」。周囲に合わせることに慣れてしまった人は、スターになるのが難しいと。
しかし、この映画の監督の視点は異なる。バックコーラスをソロへの登竜門としてではなく、独立したアーティストとして敬意を込めて描いている。映画のラストは、ゴスペル指導者でもある牧師の次のようなメッセージで締めくくられる。「人はだれでも、ハーモナイズする才能を神から与えられている。神からあなたに与えられている才能は何? ……あなた自身よ」(寺田)