『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2015年11月号
出会い・本・人
神の待ち伏せ(奥西まゆみ)
エッセイ
第15回東北アジア・キリスト者文学会議開かれる(長濵拓磨)
本・批評と紹介
- 『人を恐れず天を仰いで』
広岡浅子著、新教出版社(山口陽一) - 『イエスの譬え話1』
山口里子著、新教出版社(桃井和馬) - 『祈り』
渡辺正男著、日本キリスト教団出版局(久米あつみ) - 『はじめてのボンヘッファー』
ヘインズほか著、教文館(江藤直純) - 『伝道する教会の形成』 上田光正著、教文館(小泉健)
- 『自死と遺族とキリスト教』
土井健司編、新教出版社(窪寺俊之) - 『三位一体の神と礼拝共同体』
トーランス著、一麦出版社(原田浩司) - 『「銀河鉄道の夜」と聖書』
椚山、富永著、キリスト新聞社(大島力) - 『19世紀の聖人ハドソン・テーラーとその時代』
八木哲郎著、キリスト新聞社(菅家庄一郎) - 『アドラ・パッション』
藤田潔著、キリスト新聞社(花田憲彦)
- 本屋さんが選んだお勧めの本
- 近刊情報
- 書店案内
編集室から
岩手県の陸前高田市にこども図書館「ちいさいおうち」(NPO法人うれし野こども図書室分館)がある。震災後、地域の子どもたちに安全な場所を提供し、平穏な日常感覚を取り戻し、くつろいだ環境の中で読書を楽しんで欲しいとの願いで2011年11月に開館した。
この図書館を知るきっかけは季刊「こどもとしょかん」(東京子ども図書館発行)。東京子ども図書館は「子どもと本のしあわせな出会い」を願って活動する私立図書館である。「ちいさいおうち」専属司書が当誌の活動報告「3・11からの出発」で図書館の様子を綴っている。保護者を対象とした絵本講座やワークショップなどの催しを行っているとのことで、子どもたちに寄り添い、“本の楽園”づくりに精を出したいと語る。今なお復興途上である被災地にあって、癒えることのない悲しみと向き合っている子どもたちに寄り添い、励まし合っている姿勢には勇気づけられた。
戦後70年の節目を迎え、戦争や原爆の悲惨さ、平和の大切さを再認識する機会が与えられている。何気ない日常が一瞬にして奪われ、かけがえのない存在を失う悲しみは戦争も震災も同じ。ただ、戦争とはどういうものかを子どもに知ってもらうには、戦争責任を抜きにしては語れない。常に問い返し、語り継ぐことの大切さと難しさを思い知らされる。
被災地での復興で直面している福島県の原発問題、戦後の安全保障再考を迫られている沖縄の基地問題。大人だけの問題ではないし、子どもたちの暮らしに直結するとても身近な問題だ。
私たちにとっての国策の行方を問い、信仰と希望、愛をもって、復興の道筋を担っていきたい。そして、多くの犠牲の上で、私たちが今このとき、それぞれの立場に立たされていることを忘れてはいけないと思う。
後世にきちんと伝え継ぐためにも、本との大切な「出会い」をこれからも応援していきたい。“本の楽園”が実現されるためにも。 (友川)