『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2015年9月号
出会い・本・人
聖書学との出会い(木原桂二)
本・批評と紹介
- 『遺稿集「南無アッバ」の祈り』
井上洋治著、日本キリスト教団出版局―(伊藤幸史) - 『西洋古典文学と聖書』
ジョン・テイラー著、教文館―(水落健治) - 『愛のみ旗のもとに』
ジーン・リトル著、聖公会出版―(斎藤惇夫) - 『長老職』 ルーカス・フィッシャー著、一麦出版社―(南純)
- 『実践する神秘主義』
イヴリン・アンダーヒル著、新教出版社―(阿部仲麻呂) - 『自死遺族支援と自殺予防』
平山正実ほか監修、日本キリスト教団出版局―(窪寺俊之) - 『21世紀の信と知のために』
茂牧人ほか編、新教出版社―(西原廉太) - 『日本人の宗教性とキリスト教』
上田光正著、教文館―(小島誠志) - 『和解の福音』 上田光正著、教文館―(芳賀力)
- 『現代社会におけるイエス・キリスト』
ジョン・マッコーリー著、聖公会出版―(竹内一也) - 『ユダヤ教』 G.シュテンベルガー著、教文館―(内田樹)
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編集室から
韓国映画「シークレット・サンシャイン」を見た。原題は「ミリャン(密陽=地名)」で、シークレット・サンシャインは密陽の英訳である。世界中の映画祭で受賞した傑作らしいが、キリスト教会を批判しているとかで長い間、見る気が起きず、ようやくDVDを借りてきた。確かに傑作であった。
ミリャンで息子を誘拐犯に殺された母親が、ふと伝道集会に出席し信仰を得て立ち直っていく。しかし母親は信仰に過剰反応し、「汝の敵を愛せ」ない自分は信者とは言えないと煩悶する。牧師は「それは最も困難な試練であり、時期尚早です」と助言するが、彼女は受け入れず、刑務所に行って犯人と面会する。しかし、穏やかな受刑生活を送る犯人を見て、彼女の信仰が揺らぐ。それから教会への執拗な嫌がらせや、十戒の後半の五戒を、ことごとく破るという行為を続けていく。
気の滅入りそうなストーリーではあるが、鑑賞後の後味は悪くない。第一、クリスチャンが人口の30%近い韓国で、キリスト教を批判する映画を作っても、興行的に成功するはずがない。落としどころはきちんと用意されている。ネタバレはやめておくが、タイトル通り、ミリャン(密陽)という地に、キリストの密陽(シークレット・サンシャイン)は注いでいたのである。それはわかる人にはわかるし、わからない人にはわからない。
それにしても主人公が礼拝を妨害し、家庭集会をぶち壊しに行くシーンは凄まじい。本作の主演女優はカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した。しかし、それ以上にこのような映画を許容した韓国キリスト教界の成熟度を感じた。 (寺田)