『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2014年4月号
出会い・本・人
出会うべき時に出会う本がある(福万 広信)
本・批評と紹介
- 『宗教改革500周年とわたしたち1』ルター研究所編、リトン―(滝田浩之)
- 『旧約聖書入門1』大野惠正著、新教出版社―(小林洋一)
- 『ヨブ記の全体像』並木浩一著、日本キリスト教団出版局―(永野茂洋)
- 『シネマで読むアメリカの歴史と宗教』栗林輝夫ほか著、キリスト新聞社―(山我哲雄)
- 『アドベントと典礼』月本昭男ほか監修、聖公会出版―(笹森田鶴)
- 『教会の社会教説』小山英之著、教文館―(栗林輝夫)
- 『ユダヤ教の福音書』ダニエル・ボヤーリン著、教文館―(岡安博)
- 『水平から垂直へ』船本弘毅著、教文館―(川田殖)
- 『ドイツ告白教会の説教』加藤常昭編、教文館―(天野有)
- 『頑な心と新しい心』大串肇著、教文館―(江本真理)
- 『世の光となる教会を目指して』袴田康裕編、一麦出版社―(田邊由紀夫)
- 『ルターの祈り』マルティン・ルター著、リトン―(大柴譲治)
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編集室から
1月にスイスで開かれたダボス会議(世界経済フォーラム年次会議)での安倍晋三首相の発言が論議を呼んでいる。各国のコラムニストらが招かれた「国際メディア会議」(IMC)でインタビューに応じた際、今の日中関係を第一次世界大戦前の英独関係になぞらえ、日中間で戦争が勃発する可能性を明確に否定しなかったことが問題となったのである。今年は第一次世界大戦から百年を迎える年なので、安部首相の言葉はそのことを踏まえてのものだと言われている。
周知のように、第一次世界大戦に敗北したドイツでは帝政が倒れ、共和制が成立したが、やがてヒトラー率いるナチスが政権を掌握し、第二次世界大戦へと突入する。1934年、ドイツ告白教会はナチズムに対する抵抗運動の基本方針となる「バルメン宣言」を採択し、教会闘争を展開した。その宣言文と闘争に参加した幾人かの牧師の説教は今月号の本誌(18―19頁)で取り上げた『シリーズ・世界の説教 ドイツ告白教会の説教』に収められている。
その「編者あとがき」の中で加藤常昭氏は「ドイツ告白教会の説教者たちが戦った戦いは今も続いていると思います。この現代日本のまっただなかで説教を語り、聴く者たちならば、それがよくわかると思います」(同書、505頁)と記している。加藤氏の指摘が単なる言い過ぎではないということは昨年末の「特定秘密保護法」の成立がよく示している。この法案の成立から間もない12月21日付の『東京新聞』(朝刊)に法案そのものの危険性を指摘する一つの投書が掲載された。それにはドイツ教会闘争の指導者の一人、マルティーン・ニーメラー牧師の有名な言葉「彼らが最初に共産主義者を攻撃したとき……」が紹介されていた。私たちが同じ轍を踏まないためにはニーメラー牧師を始めとするドイツ告白教会の牧師たちの「呼び声」に真剣に耳を傾けることが今まさに求められているのである。 (中川)