『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2014年2月号
出会い・本・人
『神学大全』との出会い(山本芳久)
鼎談
『牧師とは何か』越川弘英他監修、日本キリスト教団出版局―(石井智恵美、上林順一郎、越川弘英)
本・批評と紹介
- 『旧約聖書文学史入門』K.シュミート著、教文館―(飯 謙)
- 『古代イスラエル預言者の特質』樋口進著、新教出版社―(大島力)
- 『いのちの糧の分かち合い』山口里子著、新教出版社―(佐藤研)
- 『カール・バルト』豊田忠義著、キリスト新聞社―(関田寛雄)
- 『改革派教義学1 序論』牧田吉和著、一麦出版社―(藤掛順一)
- 『美と信仰と平和』森田 進&直子著、土曜美術社出版販売―(坂井信夫)
- 『聖公会の職制論』西原廉太著、聖公会出版―(加藤博道)
- 『植村正久の神学理解』木下裕也著、一麦出版社―(吉馴明子)
エッセイ
ギリシャ人にはギリシャ人のように『聖書は物語る 一年12回で聖書を読む本』(大頭眞一)
アルノ・グリューンの「心理学」との出会い(村椿嘉信)
『日本YMCA人物事典』の刊行に寄せて(鈴木範久)
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編集室から
クリスマスが過ぎ去り、年が明けると、まだ幾分の余裕はあっても気持ちはイースターの準備へとむかう。
バロック絵画の巨匠ルーベンスが描いた祭壇画『キリスト昇架』と『キリスト降架』という絵を知ったのは、テレビアニメで放送していた『フランダースの犬』(ウィーダ原作/岩波少年文庫)が最初だった。
主人公の貧しい少年ネロが死の間際にやっと見ることができた絵画とは、どんな絵なのだろうか。後に読んだ小説で画家の名前を記憶し探したことを覚えている。
今では、二枚の絵は私の中で『フランダースの犬』と一体となり、鑑賞の機会を得るたびに真冬の礼拝堂で死んだネロとパトラッシュを思い出す。
絵の拝観料は銀貨一枚。「教会は貧しい人や虐げられている人に寄り添う存在ではなかったのか。」少し毒づいた後で真実を追求してみたくなり、インターネットで検索した。
モデルとなった当時のアントワープ大聖堂では、教会の出入りは誰でも自由だが、絵画鑑賞にはやはり拝観料が必要だったらしい。そして、収入は貴重な運営費として、伝道の費用や建物の管理費などとなり教会を支えていたそうだ。
当然と言われればそれまでだが、突然の現実に私の感情移入は一気に教会へ傾いた。
ルーベンスの絵を見るために世界中から多くの人々が訪れる。美術館にあっても不思議ではない名画に、お金を支払う価値は充分あり、『フランダースの犬』を読まなければ違和感を感じないのではないだろうか。しかし、作者は批判を抱き、物語を通して告発している。
ネロとパトラッシュは、クリスマス・イヴに絵を見てクリスマスに絵の下で亡くなった。『キリスト昇架』と『キリスト降架』の絵が、この世の苦しみから解放され、永遠の安らぎを手にいれたことの象徴のように安堵へと導く。 (吉崎)