【本のひろば】 2013年7月号

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2013年7月号

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2013年7月号

  • 『神は妄想か?』A.E.マクグラス他著、教文館―(対談:河崎行繁+西原廉太)
  • 『「主われを愛す」ものがたり』大塚野百合著、教文館―(吉岡康子)
  • 『ことばのともしび』末盛千枝子著、新教出版社―(松居 直)
  • 『宗教改革時代の説教』出村彰編、教文館―(村上みか)
  • 『新カトリック教会小史』N.ターナー著、教文館―(高柳俊一)
  • 『レイチェル・カーソン』上遠恵子著、日本キリスト教団出版局―(川俣 茂)
  • 『ニューセンチュリー聖書注解 イザヤ書 40-66章』R.N.ワイブレイ著、 日本キリスト教団出版局―(大島 力)
  • 『天皇制国家と女性』鄭?汀著、教文館―(山極圭司)
  • 『日本の近代化とプロテスタンティズム』上村敏文他編、教文館―(間瀬啓允)
  • 『韓国はなぜキリスト教国になったか』鈴木崇巨著、春秋社―(大川従道)
  • 『長老教会の問い、長老教会の答え2』ドナルド K.マッキム著、一麦出版社―(三好 明)
  • 『マルキオン思想の多元論的構造』津田謙治著、一麦出版社―(有賀文彦)

 

 

編集室から

「古代イスラエルの人々の時間概念とは、手漕ぎボートを漕ぐようなものである。……また、ここで述べられる『今日』とは、語られた当時の『今日』を超え、私たちが生きるこの『今日』ともなるのだ」 かつて、旧約聖書の申命記に関する講義で教えられたことだ。
ヘブライ語では「前」を表す言葉(ケデム)が「過去」という意味をも、そして、「後」を表す言葉(アハリート)が「未来」という意味をも包含する、といった説明における言葉だったと思う。
 「手漕ぎボートを漕ぐ」──つまりそれは、これまでの足跡が自分の前に広がり、自分の背後にこれからのときがあるということだ。それまでの歩みを見つめて洞察を深めるなかで、各々の出来事の意味や導き手を読み取り、それを背後にある未来へと委ねつつ後ろに向かって漕ぎ進んでゆくということだろう。「過去は自分の後ろに、未来は目の前にあるものだ」という先入観を持っていた私に、師の言葉は驚愕をもたらした。話は変わるが、先日、第二次世界大戦時におけるBC級戦犯に関して学ぶ機会を得た。「BC級戦犯」、それは知識としては知っていたものの、何か自分からは遠い「かつて」のこととなっていた。しかし、裁判記録や実際にその舞台の一つとなったシンガポールで資料などを目にするなかで、「歴史的事実」とされてきたことが孕む矛盾、物事を一面的に見ることの恐ろしさ、あの出来事がいまだに与えている影響を思い知らされ、言葉を失った。
 個人、家族、共同体、そして国家、それぞれに「過去」がある。
その眼前に広がる「過去」から、何を学んで読み取り、それをどのように背後にある「未来」へとつなげ、託してゆくのだろうか。そして、いかにそれを「かつて」のことではなく、想起を通して「今日」のこととするのか。
 いつもに増して戦争やその犠牲のことを思いめぐらす時期がやってくる。それを前にして、自分自身に改めて問うている。
(かとう)

書き手
キリスト教文書センター

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