小泉健、楠原博行、高橋誠、荒瀬牧彦、安井聖、須田拓ほか 著 三要文深読 十戒・主の祈り (三浦陽子)

まことの神と主イエスともっと親しくなるため、シンドクを!
〈評者〉三浦陽子


説教黙想アレテイア叢書
三要文 深読 十戒・主の祈り

小泉 健、楠原博行、高橋 誠、荒瀬牧彦、安井 聖、須田 拓 ほか著
A5判・208頁・定価2640円・日本キリスト教団出版局
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 新型コロナウイルス感染症が流行し終息とはいかず、共存の日々に突入した。この三年余り、教会は感染症との闘いで多くのことを問われた。礼拝、祈祷会、また愛餐会、その他の集会の持ち方。そこで問われたことは「教会」そのものであると言える。教会にとって当たり前だった姿にゆさぶりがかけられた。十字架に死に、葬られ、よみがえり、今も生きておられる主イエスの召しによる神の子たちが、親しく集まることが難しくなったからである。
 何が神を愛し、隣人を愛することになるのか、祈りつつ多くの選択をしてきた。しかしそれでも今日、多くの教会がこの数年で失われたことを課題として負っている。教会が、一人ひとりのキリスト者が力づけられる必要がある。
 そのような渦中で、この「三要文 深読」シリーズは出版された。それはまるで、教会の回復のために「三要文」を読み返すところから始めようと言われているようである。「三要文」それは、「使徒信条」「十戒」「主の祈り」である。これらの言葉は教会の重要文章であり、私たちの信仰の肝である。本書はそのうち「十戒」と「主の祈り」を取り上げている。12人の執筆者が、「十戒」と「主の祈り」の言葉を少しずつ丁寧に解き明かす。「使徒信条」を取り上げた続刊もある。

 本書を手にとってまず驚くのは、横書きだということである。本書は雑誌『説教黙想アレテイア』の連載が基になっているが、連載時は縦書きであった。
 本というのは不思議なもので、装丁や編集によって内容が同じでも違う響きを奏でる。分け隔てなく多くの読者に受け取ってほしい、との思いがくみ取れる。雑誌連載時は説教者向けの文章であったが、書籍化にあたり信徒の読者も想定した加筆がなされている。この本を一読して思うことは、誰でも本書によって「三要文」と親しくなれるだろうということである。
 本書の「はじめに」を書いた小泉健先生が、こう始める。「三要文を読みましょう」。また繰り返す。「三要文を読みましょう。暗記してしまいましょう」。本書はとにかく「三要文」を読むこと、それも「深読(しんどく)」することを勧める。深く読むことを求めている。黙想をあえて言い換えて、「深読」と言う。
 深読みならば、一般的には必要以上に読み取るという意味があり、あまり良い意味ではない。それを「しんどく」とふりがなをふり、良い意味で深く読むことを提唱する。それはただ、知的に深くということよりは、信仰的に、霊的に深くということであろう。霊的に深くとは、これらを読みつつ、まことの神様と主イエス・キリストと、もっと親しくなるということであろう。
 この黙想を読めば、歴史的には古い「三要文」の各項目が、新しい響きを立てて兄弟姉妹の日常生活の中でも生かされていくだろう。もちろん、教会の礼拝で語られ聴かれれば、力づけられる教会も起こされるに違いない。
 教会の回復のために親しくひざを突き合わせて「三要文」に親しもう。本書は、教会員の信仰を強め、新しく主と教会を愛する愛に生きることへ導く格好の手引きである。

書き手
三浦陽子

みうら・ようこ=日本同盟基督教団安中聖書教会牧師

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