やさしさの贈り物 ー日々に寄り添う言葉366ー

幸せの見つけ方
〈評者〉末盛千枝子

やさしさの贈り物
日々に寄り添う言葉366

片柳弘史著
A6判・390頁・本体900円+税・教文館
教文館AmazonBIBLE HOUSE書店一覧

なんと気持ちの良い本でしょうか。小さくて、手にすっぽり入るし、使われている紙も、とても柔らかな手触りで、 気持ちがいいのです。どこから読んでもいいのですが、1月1日から12月31日まであるのです。しかも一つ一つがとても短いのです。まるでお守りのようにいつも近くに持っていたらいいなと思います。少し疲れた時、何となく元気が出ない時、そんな時に、どこかを開いてみることをお勧 めします。そうすれば必ず、幸せって、こんなに単純なことだったのか、と気がつくでしょう。最後の日まで、こういうことを繰り返していけばいいのか、と思うのではないでしょうか。少なくとも私はそうです。

それに、だいたい、この片柳神父様が、ご自分の人生を考えるためにインドにマザーテレサをお訪ねになって、あそこでお手伝いをしていらしたときに、少し言葉は違うかもしれませんが、マザーに「いつまで考えているのですか、あなたはさっさと神父になりなさい」と言われたらしいのです。単純な言葉ですが、すごいことだと思います。昔、 初めてマザーテレサのことを知ったときに、今は結婚して家族がいるけれど、若いときにこの方に出会っていたら、 即バケツを持ってあそこの修道会に馳せ参じていたことだろうと思ったのを覚えています。それほど単純で力強いのでした。

片柳神父様には、このマザー直伝の単純な力強さがあるような気がします。そして、まるで、ドリトル先生のように身の回りの花や小鳥にも目を注ぎ、いつも話しかけておられるようで、私は密かにドリトル神父様、と言っているのです。幸せってそういう単純なことだったのかと思います。困難を抱えている人たちのことを考えた上でのことであるのはもちろんのことです。でも、だからこそ、それでもなお、なのです。

神父様には直接お目にかかったこともありませんし、どのような経緯でマザーテレサのところに行かれたのかも存じ上げませんが、昔見て大好きだった「オー・ゴッド」というアメリカ映画のことを思い出します。若い主人公は、 とんでもないところで神様に出会い、あれをしろこれをしろと言われて、それが神様だと気がつくのです。やがて別れの時が来た時に、「もう少しあなたと一緒にいたい」と その老人に言うのです。すると老人は「あとはお前がやれ」と言って去っていくのです。まるでマザーテレサが、片柳神父様に「あとは自分がしなさい」とおっしゃったのではないかと想像して、ちょっとクスッと笑ってしまいます。 それほど神様と親しいようにお見受けします。

信仰を持って生きるということは、こんなに単純で幸せなことだったのかと気づかせてくれる素晴らしい本だと思います。

書き手
末盛千枝子

すえもり・ちえこ=絵本編集者・3.11 絵本プロジェクトいわて代表

関連記事

  1. 住谷眞 著 烈しく攻める者がこれを奪うⅡ (吉田新)

  2. アウグスティヌス著作集 第19/Ⅱ 詩編注解(4)

  3. ロバート・キエサ 訳・注解/髙祖敏明、梶山義夫 翻訳協力 [羅和対訳]イエズス会の規範となる学習体系(一五九九年版)(川村信三)

  4. 大頭眞一著 何度でも何度でも何度でも 愛 民数記(徳田 信)

  5. 現代キリスト教教育学研究 神学と教育の間で

  6. 小島誠志文/森本二太郎写真 光は闇のなかに(小友聡)

書店に問い合わせる

  • 460-0022 愛知県名古屋市中区金山2-1-3 金山クリスチャンセンター2F
  • ☎ 03-6855-8811(自動音声案内)続けて2-9