旧約聖書の世界 そのゆたかなメッセージに聴く

平易で読みやすい愛に満ちあふれたメッセージ
〈評者〉大井 満

旧約聖書の世界 そのゆたかなメッセージに聴く
長田栄一著
四六判・376頁・本体1800円+ 税・ヨベル
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 説教者は一度の説教のために、どれだけの時間と労力と祈りを費やすのだろうか。聖書と向き合い、聴衆である教会員について思い巡らし、語るべき言葉が与えられるように祈る。長田牧師が著された本書は、まさに説教者の学びと祈りによって紡がれている。そしてそれを聞いた教会員たちによって、輝きが何倍にも増幅されて光を放つ聖書のメッセージである。

 本書は、各章ごとに一人の旧約聖書の登場人物に焦点を当てた59編の説教である。しかしそれは単なる説教ではない。28人(組)の人物によって、旧約聖書の中心的なメッセージが浮かび上がらせられるのみならず、創世記からマラキ書までを貫いて流れる救済史的なメッセージともなっているのだ。
 取り上げられているのは、アダムとエバ(4回)、カインとアベル、ノア、アブラハム(4回)、イサク(2回)、ヤコブ(3回)、ヨセフ、モーセ(8回)、ヨシュア(2回)、ギデオン、サムソン、ルツ、サムエル(3回)、サウル、ダビデ(3回)、ソロモン(2回)、エリヤ(3回)、エリシャ、ヒゼキヤ、ゼデキヤ、エズラとネヘミヤ、エステル、イザヤ(2回)、エレミヤ、エゼキエル、ダニエル、ヨナ、マラキ。詩歌を取り扱う第三部では特定の人物ではなく、各書ごとに1章が割り当てられている。
 1章あたりの長さは平均6ページに収められており、文体はもちろん、そのメッセージも読みやすく平易である。聴衆である教会員たちへの、著者の愛に満ちた眼差しがあってこそのメッセージである。
 また、各章のメッセージの終わりには、それぞれ三つの質問が付されており、読者は読んだことをもう一度自らに問うことができるようになっている。たとえば、第4章の冒頭で、「創世記三章を読みますと、彼らがその木の実を食べたとき、彼らはやがて死にましたが、すぐには死にませんでした。そこで一つの疑問が起こります。『死とは何か』ということです」と述べ、死について語られた後、最後の質問で、「死について、深く考えたことがありますか」と問われるのである。これによって読者は、説教を読むこと
に加えて、さらに語られたテーマを自分への問いとして咀嚼するチャンスが与えられているのだ。

 ぜひ本書を、ひとりでも多くの教会員、信徒はもちろんのこと、信仰を求めている人々にも読んでいただきたいと、心からお勧めする。聞くところによると新約編も準備されているとか。本書を通して旧新約聖書のゆたかなメッセージに聴き、祝福にあずかる人々が、ひとりでも多く与えられるようにと願っている。

書き手
大井満

おおい・みつる=日本キリスト合同教会板橋教会主任牧師、お茶の水聖書学院学院長

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