【出会い・本・人】子どもたちへの言葉の力強さ 笹森田鶴

 小さい頃から絵本好きだったのですが、なぜかファンタジーは素通りしており、子育てで改めてこの分野と出会いました。これらの「行きて戻りし」物語のなんとすばらしく、奥深い世界観と大事なものを手放す勇気と成長、信じる心や友情に溢れているのだろうと感激をしておりましたら、当時所属していたグループの講演会で、ピーター・ラビットの物語も実は大変な行きて戻りし冒険物語であることを教えてくださった方がいらっしゃいました。ピーター・ラビットの日本出版時の編集者、『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』などの著者で児童文学者である斎藤惇夫さんでした。目からうろこでした。
 2014年の日本聖公会総会で洗礼後の陪餐が可能となり、私は子どもの陪餐準備のテキストを作成する担当となりました。子どもたちに届ける言葉です。ピーターやガンバだから子どもたちが大人になっても心を揺さぶられるのです。そのどちらでもない私は途方に暮れ、ある方に、同じ教派で編集をされているというだけのつながりで、初対面にも関わらず相談に行きました。するとご協力をいただけるかも知れないすばらしい方をご紹介してくださるというのです。それが斎藤惇夫さんでした。
 どんなに心躍り最初の会合で浮き足立ったことでしょう。その会合の直後に斎藤惇夫さんが作成してくださった文書が『おいで子どもたち』(2016年、日本聖公会)となっていきます。
 初めて陪餐する子どもたちへのメッセージには、子どもたちへの愛、さらにずっと待ち焦がれていた子どもたちとの陪餐の喜びと感激、またこれから子どもたちが人生の中で困難に遭遇することがあっても、その体と血を与えてくださったキリストが決して一人にはしないという信仰が溢れていました。大人たちへも力強くそのまま心の真ん中に届く言葉は、自分は神さまに愛される大事な存在だったことを思い出させます。
 今でもこの宝物の本を何度も読み返しています。
(ささもり・たづ=日本聖公会東京教区司祭)


おいで子どもたち
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書き手
笹森田鶴

ささもり・たづ=日本聖公会北海道教区主教

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