【出会い・本・人】本との出会いを通しての奇跡

 これまでこの「出会い・本・人」において、本を読むのが遅い、本を読むのが苦手であると書いておられる先生方が幾人かいらっしゃいました。私はその先生方の文章を拝読し、自分だけではないのだと慰められました。私も本を読むのがとても遅く、そのうえ内容を理解するのも遅かったりします。
 今でさえそんな私ですから、大学生の頃など、それなりに勉強していたつもりでしたが、読み終えた本の数は多くはなく、学べたことも僅か、読書に苦手意識すらあったように思います。また、貴重な講義の内容も、どれだけ身につけることができたか心許ない感じもしていました。ですが、大学生活も残り僅かとなった時に或る本と出会うことによって、そんな状況が変わりました。それまで学んできたと思っていたこと、どこか納得しがたかった聖書の内容や神学で語られていたことなどが腑に落ち、理解への道が開かれたように感じました。気づけなかったことに気づけるようになり、見えなかったものが見えるようになる。先生方が真の意味での先生となる。新たな先生方や先輩方との出会い。学びを共にしてくれる友人たちとの出会い。こうしたことは、もちろんその本の力だけによるのではなく、それまでの先生方の教え、分からないながらも読んできた本、それらの蓄積が実を結んだということなのかもしれません。ですが、やはりその本との出会いがなければ│それと先生方の励ましがなければ│、そうした奇跡のような出来事は望めなかったように思います。
 今でも、その本を手に取ると、カバーの色や傷、書き込みなどから様々な想いが呼び起こされます。あいかわらず本を読むのもその内容を理解するのも速くはありませんが、そうした出会いの奇跡が与えられることを期待しつつ、今も私は本を購入し、読み、学び続けています。

書き手
鳥居雅志

とりい・まさし=立教大学兼任講師、北里大学看護専門学校非常勤講師

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