アウグスティヌスは詩編が大好きでした。詩編について、彼はこのように述べています。「この森の中には鹿も住んでいて、森の中に深くはいってゆき、憩い、歩きまわったり、草を喰んだり、ね転んだり、嚙みなおしたりしています」(山田晶訳『告白Ⅲ』中公文庫、二〇一四年、一〇─一一頁)。この森とは詩編のことです。
『詩編注解4』は、彼の最大規模の著作Enarrationes in Psalmos の邦訳四分冊目で、七六編から一〇〇編までの注解ないしは説教を収めています。今回はその中から、詩編七六編と八〇編を取り上げてみましょう。